家族に介護が必要になったけれど、ケアマネジャーはどうやって探せばいいの？
頼りになる人が、担当ケアマネジャーになってくれると嬉しいんだけど……
ケアマネジャーは、在宅での介護生活を支える「司令塔」。介護を受けるご本人とご家族にとって、欠かせないパートナーとなります。
良いケアマネジャーに担当してもらえるかどうかで、介護の質やご家族の介護負担は大きく変わってきます。
この記事でわかること
この記事では、初めて介護保険を使う方に向けて、簡単にできるケアマネジャーの探し方を5つ紹介。さらに、良いケアマネジャーを見極めるための「選び方のチェックポイント」や、上手な付き合い方までわかりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたが今どこに相談に行けば良いかが明確になり、安心して介護の第一歩を踏み出せるようになります。
ケアマネジャーを探すときは、地域包括支援センターや役所の介護保険課に相談しましょう。入院中であれば病院のケースワーカーに相談を。インターネットを利用して自分で探したり、紹介を利用する方法もあります。
そもそも「ケアマネジャー」とは？役割と重要性
ケアマネジャーの役割と重要性
ケアマネジャーの主な役割は、利用者一人ひとりの身体状況や生活環境に合わせて、最適な「ケアプラン（居宅サービス計画）」を作成することです。
『ケアプラン』ってなあに？
ケアプランとは、ご本人やご家族の希望をもとに、「いつ」「だれに」「どのくらい」介護サービスに入ってもらうのかをまとめた計画書のことです。
ケアマネジャーはケアプランの作成以外にも、デイサービスやヘルパーなどのサービス事業所との連絡調整や、毎月の介護サービス利用料の計算（給付管理）なども一手に引き受けてくれます。また、月に1回は必ず自宅を訪問し、困っていることがないか相談に乗ってくれるのも大きな特徴です。
これだけ手厚いサポートをしてもらえますが、ケアマネジャーにかかる費用は全額介護保険から支払われます。そのため、利用者の自己負担は0円。
費用を気にせず相談ができるので、費用の心配をすることなく利用ができます。
探し始めるタイミングと「要介護認定」の必要性
ケアマネジャーと契約してサービスを利用するためには、原則として市区町村から「要介護認定」を受けている必要があります。
まだ認定を受けていない方は、まずは役所の介護保険課で申請手続きを行うことから始めましょう。
どうしてケアマネジャーをお願いする前に「要介護認定」が必要なの？
要介護認定の結果（要支援、要介護）によって、ケアマネジャーを依頼する窓口が変わるからです。「要支援」なら地域包括支援センター、「要介護」なら居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当することになります。
要介護認定の結果が出たタイミングでケアマネジャーを探し始めるのが一般的な流れです。
もし「すぐにでもサービスを使いたい」という緊急の場合は、認定の結果が出るのを待たずに相談しても大丈夫です。申請と同時にケアマネジャーを探し始め、「暫定ケアプラン（要介護認定が出るまでのとりあえずのケアプラン）」を作成してもらうことで、申請した日に遡ってサービスを利用できます。
急ぎの場合は、要介護認定を申請したときに窓口で「すぐにサービスを使いたいのですが」と相談するとスムーズです。
初めてでも安心！ケアマネジャーを探す5つの方法
初めての方でも簡単にケアマネジャーを探す方法は、次の5つの方法があります。
- 地域包括支援センターに相談する
- 市区町村の役所（介護保険課）の窓口へ行く
- インターネットを使って自分で探す
- 入院中なら病院の相談員（ソーシャルワーカー）に頼る
- 民間の紹介サービスや知人の口コミを活用する
地域包括支援センターに相談する
初めてケアマネジャーを探す方にとって、最もおすすめな方法は「地域包括支援センター」に相談することです。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを支えるために各自治体が設置している公的な総合窓口で、専門の職員が常駐しています。
地域包括支援センターをおすすめする理由は、公平・中立な立場で地域の情報を教えてくれるからです。特定の事業所を無理に勧められることはありませんし、相談はもちろん無料です。
お住まいの地域を担当するセンターに行けば、近くにあるケアマネジャーがいる事業所のリストをもらえたり、空き状況についてアドバイスをもらえたりします。
地域包括支援センターの場所がわからなければ、Googleマップで『近くの地域包括支援センター』と入力してみてください。場所だけでなく、電話番号も表示されるのでそのまま問い合わせもできます。
もし認定結果が「要支援」だった場合は、そのまま地域包括支援センターが担当窓口になることもあります。
地域包括支援センターは、介護の困りごとをなんでも気軽に相談できる公的な機関です。どこへ行けばいいか迷ったら、まずは地域包括支援センターへ相談に行ってみてください。
市区町村の役所（介護保険課）の窓口へ行く
介護保険の申請手続きを行うついでに、役所の窓口で相談するのもスムーズな方法です。
多くの自治体では、介護保険課や高齢福祉課といった窓口で、地域のケアマネジャー事業所が載った一覧リストを配布しています。
一覧リストは、窓口で「初めて介護保険を使うので、事業所のリストが欲しいです」と伝えれば、その場でもらえます。一覧リストには、事業所の住所や連絡先、営業日などの基本情報が網羅されています。
手元に一覧リストがあれば、自宅から近い事業所をピックアップしたり、メモを書き込んだりしながら検討できます。役所の職員も制度に詳しいため、手続きと併せて不明点を質問できるのもメリットです。
インターネットを使って自分で探す
自宅にいながらじっくり情報を集めたい場合は、インターネットでの検索が便利です。
特に厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」は、全国の事業所情報を詳しく調べられる信頼性の高いサイトでおすすめです。
「介護サービス情報公表システム」は、事業所の職員体制や運営方針だけでなく、そこに所属している従業員はどんな資格を持った人がいるのかなども見ることができます。
電話をかける前に、ある程度の情報を絞り込めますよ。
他にも「WAM NET（ワムネット）」を使えば、地図から自宅近くの事業所を探したり、特徴で絞り込んだりすることも可能です。
自分で探すと、複数のサイトを見比べてじっくり比較検討ができます。「自分の目で情報を確認してケアマネジャーを選びたい」という人には、インターネットを利用して探すのがおすすめです。
入院中なら病院の相談員（ソーシャルワーカー）に頼る
もしご家族が入院中で、退院後に介護が必要な場合は、病院の「医療ソーシャルワーカー（MSW）」や退院支援担当の看護師に相談してください。入院中であればこれが最もスムーズな方法です。
病院の相談員は患者の病状や必要な医療処置を詳しく把握しています。
退院後の生活でも安心して過ごせるよう、医療機関との連携に強いケアマネジャーや、特定の病気に詳しい事業所を紹介してくれる可能性が高いです。
退院前に担当ケアマネジャーがつけば、入院中に病院スタッフと新しいケアマネジャーを交えた話し合い（カンファレンス）を行ってもらえます。退院前にカンファレンスをしておくことで、退院後の介護サービスの利用がスムーズになります。
「退院ぎりぎりに相談すればいい」と考えず、入院中の早めの段階から準備を進めておきましょう。
知人の口コミを頼る
公的なリストだけでなく、「実際の評判」や「人柄」を知りたい場合は、知人の口コミを頼るのも有効です。
すでに介護サービスを利用している友人がいれば、「どこの事業所にお願いしているか」「担当者は親切か」などを聞いてみましょう。
かかりつけ医や、利用予定のデイサービスやヘルパー事業所のスタッフに聞いてみるのも一つの手です。
地域の事情に詳しい専門職ならではの視点で、「あの事業所のケアマネさんは対応が早くて良い」といった生きた情報を教えてくれることがあります。
あり良い口コミの事業所が見つかれば、「◯◯さんからこちらが良いと聞いて……」と電話してみてOK。
「いい評判を聞いて連絡してくれた人なんだ」と、より親身になって相談を聞いてくれることが期待できます。
良いケアマネジャーに出会うための選び方・5つのチェックポイント
良いケアマネジャーに出会うための選び方・5つのチェックポイントは次の通りです。
- 話しやすさと相性（コミュニケーション）
- 自宅からの距離とフットワークの軽さ
- 経験年数や保有資格（専門性）
- 事業所の体制と特定事業所加算の有無
- 面談時の対応と提案力
話しやすさと相性（コミュニケーション）
ケアマネジャー選びで最も大切にしたいのは、「話しやすさ」や「相性」です。
介護生活は長く続くもの。ケアマネジャーとは毎月顔を合わせて、家族のプライベートな悩みまで相談することになります。
最初の電話や面談の際に「この人と本音で話せそうかな？」という直感を大切にしてください。
専門用語ばかり使わずに分かりやすく説明してくれるか、こちらの話を遮らずに最後まで聞いてくれるか、といった点も重要なチェックポイントです。
どんなに知識が豊富でも、威圧的だったり、こちらの要望を聞き入れてくれなかったりする相手では、良い介護生活は送れません。
まずはコミュニケーションがスムーズにとれる相手を選びましょう。
自宅からの距離とフットワークの軽さ
事業所の場所が自宅から近いかどうかも、見逃せないポイントです。
できれば自宅から数キロ圏内、なにかあった時にすぐに来てもらえる距離にある事業所が理想的です。
近さをおすすめする理由は、なにかあったときの対応スピードに直結するからです。
また、自宅から近い事業所のケアマネジャーであれば、自宅近くの介護サービスの情報に詳しいことも期待できます。
遠くの事業所でも対応してくれることはありますが、物理的な距離があると、どうしても緊急時の対応に時間がかかったり、自宅近くのサービスについて詳しくなかったりします。
事業所リストを見る際は、住所を確認し、自宅からの距離をチェックしておきましょう。
経験年数や保有資格（専門性）
ケアマネジャーは、全員が介護支援専門員の資格を持っていますが、ケアマネジャー以外に保有している「基礎資格」は人によって異なります。
看護師、介護福祉士、社会福祉士など、バックグラウンドは様々です。ケアマネジャーを選ぶ際は、資格から得意分野をチェックすると良いでしょう。
例えば、胃ろうや吸引などの医療的ケアが必要な場合は、看護師資格を持つケアマネジャーにお願いできると安心です。自宅での入浴や排泄の介助など、生活支援を重視したい場合は、介護福祉士の資格を持つケアマネジャーにお願いすれば、生活上でのアドバイスをもらいやすくなります。
事業所に初めて電話するときや、初回面談のときに、「うちは医療的なケアが必要なのですが、詳しい方はいらっしゃいますか？」と率直に聞いてみるのがおすすめです。
事業所の体制と特定事業所加算の有無
ケアマネジャー個人の資質だけでなく、所属する事業所全体の体制も確認しておくと安心です。一つの目安となるのが「特定事業所加算」を取得しているかどうかです。
「特定事業所加算」は、24時間の連絡体制があるか、研修を定期的に行っているかなど、国が定めた厳しい基準をクリアした事業所だけが取得できるものです。
リストの備考欄などに「特定事業所加算」の記載があれば、一定以上の質が担保されている事業所だと判断できます。
また、担当者が休みの時や不在の時に、他のスタッフが代わりに対応してくれる体制があるかも重要です。
担当ケアマネジャーがすぐに対応できないときでも、組織全体でしっかりバックアップしてくれる事業所を選びましょう。
面談時の対応と提案力
契約前の初回面談（インテーク面談）は、ケアマネジャーの実力を見極める絶好の機会です。ここでは、こちらの要望に対して具体的な提案をしてくれるかに注目してください。
優秀なケアマネジャーは、単に「はい、わかりました」と御用聞きになるだけではありません。
「そのご希望なら、こういったサービスもありますよ」「その方法だと転倒のリスクがあるので、代わりに手すりをつけませんか？」など、プロの視点からプラスアルファの提案や代替案を出してくれるケアマネジャーであれば、安心して在宅介護の伴走を任せられます。
逆に、こちらの言う通りにしか動かない、あるいは選択肢を一つしか提示しない場合は注意が必要です。
複数の選択肢を示し、一緒に考えてくれる姿勢があれば、経験豊富なケアマネジャーと言えます。
ケアマネジャー決定後の上手な付き合い方
信頼関係を築くためのコミュニケーションのコツ
良いケアマネジャーと出会えたら、その後は信頼関係を深めていくことが大切です。そのためのコツは、「報告・連絡・相談」をこまめに行い、情報を包み隠さず伝えることです。
「こんなことを言ったら迷惑かな」「家の中の恥ずかしいことは言いたくない」と遠慮してしまう方もいますが、正確な情報がないと、ケアマネジャーも最適なプランを作れません。ご本人の小さな体調変化や、ご家族の介護疲れなども、ありのままに伝えてください。ケアマネジャーには厳しい守秘義務があるので、安心して話してくださいね。
情報は隠さずにオープンにすることで、ケアマネジャーも状況を深く理解でき、より適切なサポートができるようになります。
また、ケアマネジャーも人間なので、心の通うコミュニケーションは素直に嬉しいものです。信頼関係を深めるためにも、何かしてもらった時には感謝の言葉を伝えるなど、人と人としてのコミュニケーションを大切にしましょう。
もし相性が合わなかったら、担当者は途中で変更可能
ケアマネジャーをどれだけ慎重に選んでも、実際に担当してもらってしばらく経つと「どうしても合わない」「話が通じない」と感じることがあります。
そんなときは、我慢せずに担当者の変更を申し出ても大丈夫です。
利用者にはケアマネジャーを選ぶ権利があります。不信感を抱いたまま介護を続けても、お互いにとって良い結果にはなりません。変更したい場合は、事業所の管理者に相談するか、言いにくい場合は地域包括支援センターに相談して、別の事業所を紹介してもらうことも可能です。
「申し訳ないな」とケアマネジャーの変更をためらう方も多いですが、ご本人とご家族が、ストレスなく安心して介護生活を送れることが何より重要です。
担当を外されたケアマネジャーが成長するためのきっかけにもなるので、遠慮せずに変更を申し出てください。
まとめ：まずは地域包括支援センターか役所に相談してみよう
ここまで、ケアマネジャーの探し方や選び方のポイントをお伝えしてきました。
何から始めればいいか迷っている方は、お住まいの地域の「地域包括支援センター」か「役所の介護保険課か高齢福祉課」に相談に行くことから始めてみてください。どちらも無料で親身に相談に乗ってくれますし、公平な立場で情報を提供してくれます。
電話一本かけるだけでも、状況は大きく前に進みます。一人で悩まず、この記事に書いてあることを実践して、ご家族にとって最適なケアマネジャーを見つけてください。
この記事では、ケアマネジャーの探し方から、信頼できる担当者を選ぶためのポイントまでを解説してきました。
最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- まずは相談：迷ったら「地域包括支援センター」か「役所の窓口」へ行くのが一番の近道。
- 準備：介護保険の「要介護認定」の申請も忘れずに（同時進行でOK）。
- 比較：事業所リストやネット検索を活用し、自宅から近い事業所をいくつかピックアップする。
- 見極め：初回面談では「話しやすさ」と「提案力」をチェック。相性が合わなければ変更も可能。
介護は突然始まることも多く、最初は不安でいっぱいだと思いますが、あなたにはケアマネジャーという心強い味方がつきます。
まずは、お近くの相談窓口へ電話をかけるところから始めてみてくださいね。